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前回、「あかつき」の広報は、肝心のサイエンスの部分がやや弱いのではということを書きました。
科学の成果や意義を一般向けに伝える方法論はサイエンス・コミュニケーションと呼ばれ、この分野はここ10年ほどでアメリカやイギリスの先行によりかなり進歩しています。 サイエンス・コミュニケーションでは、科学をどう伝えればよいかについて、順を追って何段階かに分けて考えることがあります。 「あかつき」の場合であれば、こういうことを伝えるとよいのではと思うことを挙げながら書いてみます。 (1)まずは、興味喚起 興味のない人はそもそも話を聞いてくれないので、最初の興味を持つきっかけを与えます。 金星の場合、地球との比較により、金星の科学をより身近に感じてもらうことができます。 ・金星は、惑星の名前を覚えるときの順番では地球の1つ前、つまり太陽の周りを地球の1つ内側の軌道で周る惑星。 ・並べて比べてみても地球と金星の大きさはほぼ同じで、兄弟星といわれる所以。 ・ところが、金星の気温は500℃近くに達し、地球の環境と全く似ていない。 ・空は全体が雲で覆われ、晴れの日というのはない。 ・上空の雲は強い気流により高速で流れ4日で金星を1周、金星本体より上空の気流の方が回転が速いという不思議な状況。 こういう話をすれば、好奇心旺盛な子供たちや、ある程度素地のある理系男子あたりなら食いつき、話を聞く気になってくれます。 金星はどうしてそうなったのだろう、そうか、あかつきが解明しようとしている金星の科学というのはこのへんに関係あるんだな、と自然と気づいてくれる方もいます それから経験上、女性や高齢者の方には、次のような伝え方も好印象のようです。 ・他人は自分を映す鏡であり、人と付き合って、自分のことが初めて分かるということはよくある。惑星も同じで、地球のことだけ調べてもだめで、金星のことが分かると地球のことはもっと分かる。 (2)次に、情報伝達 肝心の科学的な中身の部分を伝えます。 あかつきの場合、本家の あかつきプロジェクトサイト中の「金星の科学全6ページ」やそれに続く「探査計画全3ページ」は素晴らしいページで、あかつきの目指す科学が過不足なくすっきりまとめられています。 また、あかつきプロジェクトマネージャ中村先生のインタビュー「JAXA|中村正人 金星探査で惑星気象学の確立を」、おなじくプロジェクトサイエンティスト今村先生のインタビュー「JAXA|金星の風の謎に挑む、世界初の惑星気象衛星」も大変分かりやすいです。 ただ、これを分かりやすいと感じるには少し素養が必要で、広く一般に訴えるにはさらにもう少し噛み砕いたコミュニケーションも別途必要です。 例えば、あかつきが行う主な観測方法は金星をカメラで撮影することですが、赤外線と紫外線といういずれも目に見えない光での撮影であり、このことが「あかつき」が何を見るのか理解されにくい原因の1つだと思います。 私は、目に見えない光で観測するということのイメージが全くつかめない人には、電気製品のリモコンの出す光を携帯電話のカメラで見せたりして、こんな風に目に見えない光を撮影するんだ、という説明をしたりします*。 あかつきは、少しずつ性質の異なる色々な波長の光で金星を撮影し、色々な高度帯の雲の分布や、雲が出す赤外線や、地表面から出る赤外線などそれぞれ違うものを捉えます。 あかつきが去り際に撮影した金星の写真で、左側の一部分しか写っていないものは、太陽のあたっている部分だけが見えています。 金星が丸く全部写っている写真は、雲が自分で出す赤外線を捉えているので、太陽の光は関係なく、金星全面にわたって雲が写っています。 気象衛星のひまわりが夜でも地球の雲が撮影できるのも全く同じ原理です。 サーモグラフィーや赤外線監視カメラも同様で、物体はみなある波長の光を出していて、それを放射といい、その波長で撮影すれば夜真っ暗でもその物体は見えます。 長くなるのでこのくらいにしますが、他にも夜間に雲の下の金星表面を観測する原理は、火災の煙の中で人が発見できるカメラと原理が似ていますし、あかつきのもう1つの観測である電波掩蔽も、身近な光の屈折現象から説明ができます。 正確さとわかりやすさをある程度両立させ、身近な現象などを例えに出して理解を助けるのがコツです。 *家電製品のリモコンの先から出ているのは近赤外線だが、デジカメのCCDは近赤外線域にも感度がある。携帯電話のカメラをONにし、カメラにリモコンの先を近づけ、リモコンの適当なボタンを押してもらうと、携帯の画面にはリモコンの先からまばゆい光が出ている様子が写る。 (3)最後に、メッセージ 体系的な情報だけでなく、より心に残る、具体的でメッセージ性の強い「ひとこと」を伝え、情報の受け手に興味や問題意識を芽生えさせることも重要です。 「あかつき」が目指す科学は、地球科学に直結する部分が多いので、 ・他の惑星を知ることで地球が分かる。惑星探査に注目を! ・地球や惑星探査のように、日常生活でもいつもより視野を広くもって行動してみよう などのことはメッセージとして伝える価値があると思います。 金星の高い気温の原因の1つは多量の温室効果ガスによる温室効果ですので、地球環境問題と関連づけて伝えられればベストです。 上記のような考え方は、サイエンスカフェ、学校の授業、インターネット上での情報発信などさまざまな形で実践できます。 ここ数年で、新しい情報メディアの登場や科学技術行政の逼迫などで宇宙開発の広報をめぐる情勢は大きく変わりました。 今回は「あかつき」を例に書きましたが、他にも今後「はやぶさ2」「ベピ・コロンボ」も理学衛星ですし、今後の地球観測衛星「GCOM」シリーズや「だいち2」、「EarthCARE」、「GPM」も地球科学に関わるため、サイエンス・コミュニケーションの重要性はますます増大します。 個人的には、NASDA系では久々に科学的要素の強い衛星であるGCOM-W1で、広報やサイエンス・コミュニケーションがどの程度成功するかに注目しています。 (できれば直接お手伝いもしたいと思っています) **** またまた前回に続き、こぼれ話その3。 あかつき衛星主任の中村先生が学生に説いている教えの1つに、こういうものがある。 「自分の研究について、家族や恋人に説明しなさい。」 大学院時代に先生の授業で聞いたその言葉は私の座右の銘の1つになった。 私なりの解釈で、僭越ながらこの言葉に続きを付け加えるとすれば、こうである。 「それが、サイエンス・コミュニケーションの第一歩です。」 小惑星探査機「はやぶさ」やソーラー電力セイル実証機「イカロス」は技術的にだけでなく広報的にも成功した宇宙機です。
特にWebサイト、ブログ、twitterなどインターネット・メディアを有効に活用した効果が大きく、例えばイカロスはそれで表彰も受け、「広報実証機」と評されるほどです。 その反響の大きさに、TV、新聞なども大きく取り上げるようになり、JAXAの知名度も(それを指標にするのが適切かどうかは微妙ですが)一気に上がったと思われます。 従来型のいわゆる三大(あるいは四大)メディアは、近年その立場が揺らいでいると指摘はされつつも、自分で興味を持って情報を取りにいかないと情報が得られないWebサイト等と比べ、興味に関わらず多くの人に情報伝達する力があり、その効果はいまだに絶大です。 ちなみに、twitterはソーシャルメディアとしての特質上、自分の興味から少し離れた情報も一緒に流れるのでTVのような「情報垂れ流し効果」も併せ持っており、私はこの点でtwitterのもつ力にかなり注目しています。 さて、「はやぶさ」帰還時は、インターネット上では特設Webサイト、ブログ、twitterを併用した万全の広報体制が組まれ、ときに探査機の擬人化や、思いもよらない例え方などユニークな情報発信も交え、探査機の状況や探査機の技術、そこにどんな人がどんな思いで関わっていたか(ここは重要。「人が見える広報」である)などを伝え、多くの人と感動を共有することに成功しました*。 では金星探査機「あかつき」も単にこのやり方を踏襲し、同じように探査機の状況や技術を伝えていけばよいのでしょうか。 現状ではそれに近い状況になっていますが、それだけでは一つ一番重要なものが欠けています。 あかつきがはやぶさやイカロスと決定的に違う点は、それが工学実証衛星(新しい技術を試すもの)ではなく理学衛星(それで新しい科学を研究するもの。理学は純粋な科学の意)である点です**。 衛星が金星に到着し周回軌道に入れば成功なのではなく、その先に新しい科学的な知識が得られないといけないのです。 なので、あかつきで何が分かるのか、それがなぜ大事なのか、そもそもなぜ金星を研究するのか、それらを広く一般に説明する義務がそこにはあります。 これは はやぶさ、イカロスにはあまり無かった要素で、あかつきで試されているのです。 現在のあかつきの広報はその肝心のサイエンスの部分がやや弱いと感じます。 例えば、あかつきのtwitterでは、探査機の状況や技術についてのつぶやき、他の宇宙機との微笑ましいやり取りなどはあっても(それはそれで重要)、金星の科学や あかつきがそれにどう挑むかについての話題が少ないです。 理学衛星で初のtwitterアカウントとして、6年後の軌道投入再挑戦の間に、それらを楽しく分かりやすく伝え広める方法を考えておいてほしいと思っています。 他人事のように書いてきましたが、これは私の仕事にも関係することなので、私ももちろん考えています。 次回は、あかつきのサイエンスをどう伝えればよいかについて、サイエンス・コミュニケーションの観点で考えてみます。 *「はやぶさ」がかつて深刻な通信途絶状態に陥ったとき、JAXAの情報発信不足から、インターネット上では様々な推論が沸き起こってあっというまに議論が発散するという事態が生じた。「はやぶさ」のインターネット上での情報発信の立役者である「IES兄」氏はこの時のことをよく語っておられ、その問題意識の高さが後の「はやぶさ」帰還時の情報発信を成功に導いたと思われる。しかし、「あかつき」では、今年(2010)の軌道投入失敗直後の情報不足で、似たような情報的混乱が再び生じてしまった。起こっていたのが技術的なトラブルだったにも関わらず、工学ではなく科学出身の阪本先生が当日の記者対応を1人でしなければならなかった体制などは問題だったと思うが、何かもっといい体制はなかっただろうか。 **実際には、宇宙研の衛星は理学衛星であっても工学実証を盛り込み(あかつきも世界初のセラミックスラスタを搭載し実証)、工学実証衛星であっても理学観測が出来る(はやぶさも小惑星の科学探査に成功)ようにしている。この背景には、理学と工学は一体のもの(理工一体)という宇宙研の思想がある。多分野の専門家が一体となれるこの考え方は、宇宙研が低予算で高度な成果を出してきた一番の秘訣であるが、理学衛星にまで工学実証を盛り込むことについてはときに問題とする意見もある。未検証な技術を取り入れることで、理学衛星に失敗のリスクを負わせてしまう可能性があるためである。 *** 前回に続き、こぼれ話その2。 私が大学院を卒業するとき、お世話になった先生方、先輩方が書き寄せてくださった色紙は、今でも見ると勇気付けられるので、部屋に飾っていつも見ている。 「今までありがとう、これからも元気で」的な書き込みはあまりなく、むしろ「宇宙開発をもっとよくしてくれ」とか、宇宙科学、教育、情報化などを推進してくれ、という「要望」とか「訴え」みたいなものが多く、今の自分がそんな各位の期待にこたえられているかどうか、まだ自信がもてるほどではない。 あかつき衛星主任の中村先生は、特徴的な走り書きで「これからも一緒に仕事ができるかもしれませんね。よろしく」と書いてくださった。 ごめんなさい。 私はまだ先生のお手伝いができる域には達していません。 いつか待っていてください。 今年1年を振り返ると、宇宙科学では2つの大きな出来事がありました。
それは、「はやぶさ」の小惑星からの感動的な帰還と、「あかつき」の金星周回軌道への投入失敗です。 今日は、あかつきの軌道投入失敗で私が感じたことについて。 あかつきの軌道投入用のスラスタの噴射が途中で停止し、軌道投入できなかったという知らせを聞いたとき、最初は血の気が引く思いがしました。 昔お世話になった先生方や先輩方が関わっておられ、探査機のことも、その方々のことも大変心配しました。 一方でその時、こうも思いました。 あかつきはむやみに止まったのではないだろう。 あかつきは、きっと何か考えがあって、自分自身のエンジンを止めたんだ、と。 あかつきは、のぞみ姉、はやぶさ兄の意志を受け継いだ賢い子で、地上からコントロールしなくとも自分の判断で自律的にさまざまな制御ができます。 なぜなら、これらの探査機は電波の往復に数十分かかるほど地球から遠く離れ、地上からリアルタイムでコントロールできないことがあり、また特にあかつきの軌道投入中は、地球から見てあかつきが金星の向こう側にいて、そもそも地上との通信はできない条件でした。 後から出てきた情報は、私が信じていた通りでした。 あかつきは姿勢の異常を検知し、安全な方法で噴射を止め、セーフホールドモードに移行してきちんと自分の身の安全を守り、6年後の可能性を私たちに残してくれました。 もし噴射を止めなければもっと大変なことになり、6年後に軌道投入できる可能性も失われていたかもしれません。 その後明らかになりつつある根本的な原因であるバルブ系の異常の詳細と、それが6年後の軌道投入再挑戦までに解決できる問題なのかどうかについては、これから関係者の皆さまが調査していくことだと思いますので、その情報を待ちたいと思います。 不具合は不具合なので、きちんと解明する必要があるのはもちろんです。 でもここで言いたいのは、この失敗がむやみな失敗ではなかったということ。 人が歩いていて転ぶときも、安全な転び方と、怪我をする(場合によっては命にかかわる)転び方とがあります。 柔道でも先に受け身を徹底的に練習しますし、スキー・スノボも初めてやるときはまずレッスンを受けて、安全な転び方を練習したほうがよいです。 あかつきは上手に転んだので、怪我をしていません。 このことについてはあかつきに感謝したいですし、関係者の皆様も本当によくやってくださっていると思います。 これからも応援します。 次回は、あかつきの広報について、ちょっと突っ込んで書きます。 *** こぼれ話。 もうすぐ閉館になる東京駅前OAZOのJAXA広報施設、JAXAi。 今そこに、あかつきを応援するメッセージを書き込むノートがあるのだが、昨日そこに、あかつき衛星主任の中村先生自身の書き込みがあるのを見つけた。 一行の短いメッセージだったが、とても情熱的な強い言葉だった。 私がそれをここに書き写しても言葉の力が半減してしまう気がするのでやめておく。 フルネームで署名もしておられるが、かなり走り書きなので、先生の字を知っている人でないと読めないかもしれない。 なぜ私が先生の字を知っているかについては、 本当はもっと気の利いたことを書かなければ、なのですが、印象が強すぎたせいか、言葉が思いつきません。
![]() 今夜、小惑星探査機「はやぶさ」が、小惑星イトカワへの着陸とサンプル採取(成否は不明)、そして相次ぐトラブルを経て、当初の予定より長い7年の宇宙空間の旅を終え地球に帰還しました。 帰還用のカプセルは無事大気圏に突入し、信号を出しているとのこと。 追記:ヘリコプターから目視でも確認できたとのこと。 はやぶさ本体は流れ星となって消滅したが、直前に地球の写真を撮影しました。 すみません。 あとは、はやぶさに関する今日の私のtwitterでのつぶやきから抜粋(時系列順)。 *** 学生時代、はやぶさ運用を通じて探査機のシステムから研究者としての生き方まで非常に多くを学び、一生の財産になった。この探査機で育てられた人、生き方が変わった人は多いはず。だからこそ、これで終わりにしてはいけない。 posted at 13:31:06 TLの勢いがいいのでどさくさで懺悔 学生時代、はやぶさ運用のとき、イオンエンジンのOn/Offの読みあげを思いっきり間違って言ったことがあり、ごめんなさい NECさん気づいてすぐ訂正してくれましたけど posted at 17:16:44 懺悔2 あと、はやぶさ運用室で、はやぶさのペーパークラフト組み立ててたのも、運用室でやることじゃないですよね。ごめんなさい。若気の至りだ。そのときのページまだ残ってるけど http://bit.ly/axRypR posted at 17:22:19 これでもう言い残すことはないな。おかえりなさい、はやぶさ。ありがとう、はやぶさ。 posted at 17:22:53 ISASでも今は学生が衛星を運用するケースは減ってきているそうだ。学生が運用すると教育的効果が期待できる一方、経験や能力が不足しがちなので運用ミスの心配があり、また、運用ミス時に責任が問えないという問題がある。 posted at 17:37:01 twitterもISASも復活したと聞いて自主的アク禁から復帰なう。もうすぐカプセル分離?がんばれ、はやぶさ。最後の仕事。 posted at 19:49:37 ※はやぶさ地球帰還の影響で中継サイトやtwitterが過負荷になっていた 拍手だ!!! posted at 19:51:49 ※ここでカプセル分離に成功し、管制室の中継画面でスタッフがみな拍手していた さっきから川口先生が見入ってるのってAOCS=姿勢軌道制御系の画面…だよな。姿勢を変更して地球の撮影…やるの…かな。はやぶさの、本当の最後の仕事。がんばって… posted at 19:56:07 また全員で拍手!もしかして、もしかしてやったのか? posted at 22:33:36 ※ここで運用終了。あとで分かったが、地球の撮影も出来ていた。 そうか、これでもうLOS=通信終了ですか。毎日毎日行われていた、はやぶさ運用もこれからはもう無いのかと思うと;; posted at 22:39:32 オカエリナサイ つくばより。南の空に向かって乾杯しました。 posted at 22:53:03 ※ここで大気圏突入。twitterのみんなでオカエリナサイを言いました(「トップをねらえ」のネタ)。 はやぶさ、地球帰還。帰還用カプセルは無事大気圏突入し、信号を出しているとのこと。はやぶさ本体は流れ星となって消滅したが、直前に撮影した地球の写真は受信出来ているとのこと。 posted at 23:21:17 いいプロジェクトはいい人材をたくさん育てる。はやぶさは惑星探査以外の分野も含め多くの人を育てたり感動させたりした。これだけでも惑星探査を続けるべき理由の1つになると思ってる。直接的な社会貢献だ。 posted at 23:33:54 こんなに泣くとは思わなかった。こんな終わり方した探査機無かったし…予想外。 posted at 23:45:35
金星探査機「あかつき」、3日前の打ち上げ延期を経て、今日無事打ちあがりました。
アメリカNASAの探査機は全体的に惑星表面のリモートセンシングにかなり重点が置かれており、また、ヨーロッパESAのヴィーナス/マーズ・エクスプレスは確かに毛色の違う探査機だけれども両者は可能な限り共通化して作られているために、必ずしも金星・火星の観測に特化しきれたとはいえない印象があります。 そんな中、提案から10年以上経っても少しも新規性を失わない、世界に先駆けた金星大気・気象探査ミッション「あかつき」は、科学のお手本のようなミッション。 またその困難なミッションを可能にしてしまう技術も素晴らしい。 来月小惑星から帰還する「はやぶさ」もそうであるように、科学と技術が美しく結晶したまばゆいばかりのミッションが、宇宙科学研究所のいいところ。 太陽光(太陽風ではない・・・太陽風は圧力が小さい)を受けて推進力にする、太陽帆船=ソーラー電力セイルの世界初挑戦ミッション「イカロス」も「あかつき」と同時に打ち上げられました。 こうして今日「あかつき」「イカロス」は宇宙へ羽ばたき、そして来月は「はやぶさ」が地球に突入してその役割を全うし、サンプル回収カプセルだけを地上に残して文字通り燃え尽きてしまいます。 こうなると、「あかつき」「イカロス」「はやぶさ」が同時に宇宙に存在し、いずれも非常に大事な時期であるこの1ヶ月ほど、宇宙研の衛星管制スケジュールはかなり過密状態で、何とか全てうまくいってほしいと祈るばかりです。 「あかつき」「イカロス」が金星に到着するのは半年後の12月。 今日21日金曜日に打ち上げに成功したのですから、きっとヴィーナスの祝福と歓迎を受けられると信じています。 今宵は月と金星のアプローチがあったので、筑波宇宙センターで写真を撮ってきました。
写真に写っているロケットは、H-IIロケットのほぼ実機の機体。 明後日の5月18日早朝、このロケットの改良版であるH-IIAロケットの17号機で、金星探査機「あかつき」がこの金星へ向けて出発します。 暁という言葉の意味は、皆が待ち望んでいたことの始まりであり、またこの「あかつき」が打ちあがるちょうどその時刻のことも指します。 「あかつき」による、世界で初めての金星気象・大気の観測が成功しますように。 宵の明星に祈りを込めて。 ![]() ![]() ![]() ![]() 私はどっちかというと悲観論者なので、宇宙開発の現状や将来に関してこれまでもずいぶん後ろ向きな事を書いてきましたが、今回もそのパターンで、申し訳ないです。
ただ少なくとも、私は諦めてはいないのと、私にはできることがあると思っています。 批判がしたいのではなく、変えたいのです。 では、本文。 *** アメリカは2/1発表の予算教書で、宇宙政策を大きく転換することを明らかにした。 ブッシュ政権が進めてきた、有人月着陸を再び目指す「コンステレーション計画」は、膨大な予算を投じてなお開発にめどが立たないためこれを中止した。 一方NASAの予算自体は増え、科学研究や基礎研究など真面目なテーマにきちんと投資することになった。 これをふまえて日本はどうするかというのが大きな問題で、ネット上でも議論は白熱している。 私は、これまでこういう考えでいた。 (1)私の勝手な前提: アメリカは膨大なリソースを有人宇宙計画で消耗するため、本来堅実にやっておくべき、衛星・探査機を使った地球・惑星科学の研究や、将来に向けた基礎技術研究が手薄になるだろう。そこに日本が食い込むべきチャンスがある。 (2)私の希望的観測: そこで、日本はアメリカがおろそかにしている科学的・基礎的研究を重視する方針に転換すれば、日本は低予算でも価値の高い研究をやる素質は持っているので、成果は甚大で、特色ある宇宙開発先進国になれる。それは科学技術、産業、経済、教育、国防、どれにとっても有益である(宇宙開発に詳しい人からは「そんなの当たり前だ」と言われそうな、大したことはない意見だが)。 この(2)の希望的観測の実現が難しいことは、これまでの日本の宇宙行政の状況から私も分かってはいた。 日本の宇宙開発は、宇宙科学など一部の分野で特別に評価の高いものがある一方、多くの大規模プロジェクトは新規性や成果が少ない。 そこへ宇宙基本計画が示され、さらに事態が悪化。 これまで批判されてきたものも含むあらゆる事業の継続(一部は政権交代後の仕分けで見直された)と、二足歩行ロボットを月面に送り込むなど技術的正当性のない素人考えとしか思えない検討が明文化されてしまった。 こうして(2)が実現しない間に、今回(1)の前提も覆されてしまった。 アメリカは、科学研究・基礎研究をおろそかにせずきちんと投資することにした。 たぶんアメリカは日本より先に正しい方針転換をしたのだろう。 逆に日本はこのままだとアメリカなど諸外国と対等に成果を出すことがだんだんと難しくなり、日本の宇宙開発の未来は相当暗いということになる。 かつて高エネルギー加速器の建設中止問題などもあったように、アメリカは政権が変わると政策がまるっきり変わってしまい、それによって科学技術が大きく振り回される怖さがある。 しかし、今回は思った。 一度決めた方策を変えられない日本の体質のほうがもっと怖いと。 いま私たちは、状況を少しでもましにするために各自ができることをするしかないのだが、道のりは険しい。 個人的には(2)の考えは変えないつもりでいるが、自分の身の振り方も含めて、最近ますます悩ましい日々を送っている。 つくば万博で使用されて25年、恒久的な展示施設として残され、いまや人気の科学館となった「つくばエキスポセンター」では、明日から2階の展示室がリニューアルオープンします。
今夜は一足早く内覧会で見させていただきました。 お世話になりました。 公式 つくばエキスポセンター:公式ウェブサイト ニュース つくばエキスポセンターに新展示場 16日から一般公開 - MSN産経ニュース (前略)これまで宇宙関係の展示が中心だった2階展示場(722平方メートル)を改装し「ナノへの挑戦」「超への挑戦」「生命への挑戦」「環境への挑戦」「宇宙への挑戦」の5つのゾーンで構成する。クイズに答えて正解すると、地球がどんどん青くなる「めざせ青い地球」コーナーなど体験型施設を充実させたほか、科学実験を実演する「創造の森ワンダーランド」を設置した。 同センター運営業務部の神田久生部長は「大人には『科学がひらく明るい未来』を、子供たちには『科学の面白さ』を感じてもらいたい」と話している。 *** この記事に出てくる「めざせ青い地球」を一足早く体験してみた。 クイズに正解すると地球がどんどん青くなるというが、では逆に不正解するとどうなるのか? …行って体験してみてください。 以下ネタバレ注意。 *** これが初期状態。 ![]() 左奥のはそのままで、右奥のは全問正解、手前のはわざと間違えまくって、同時に回答していく。 クイズの問題は全て地球環境変動(温暖化)に関するものだった。 不正解だと地球環境を理解していないということで、地球が… ![]() 右奥のやつは、確かに開始前よりも鮮やかに青く光っている。 クイズは、地球の大気で最も温室効果を強く発揮する物質は二酸化炭素ではないこととか、地球には大量の二酸化炭素を吸収してきたメカニズムが植物以外にあることなど、一般にあまり知られていないと思われるところを突いていて、意外に骨があった。 でも、環境が変化すると本当に地球はこんなに赤くなるんだろうか? そのへんはちょっと考えさせられた。 無意識か、意識的にか、火星の色をイメージしているのではと思った。 アメリカの探査機がよく火星の赤い空の写真を送ってくる。 だが、この赤色は二酸化炭素ではなく、大気中の微粒子(エアロソル)によるミー散乱という光の散乱メカニズムによるもの。 ちょうど昨年オーストラリアで大規模な砂塵嵐が起きたときもこれで空が真っ赤になった。 「オーストラリア 砂塵嵐」で画像検索すれば真っ赤な写真がたくさん出てくる。 あと、火星は地面に酸化鉄が多いので、赤色なのはもともと表面の色でもある。 真っ赤な地球という演出はインパクトがあるし分かりやすいけど、このまま環境が変化しつづけたとき、本当のところは、どんなメカニズムが働き、どんな色になるのだろう。
今年最初の書き込み。
*** テレビ東京で見た今年(去年の大晦日)の東急ジルベスターコンサートは最高だった。 今回のカウントダウン曲はホルストの「惑星」の中の有名曲「木星(Jupiter)」。 去年は夜空に毎日とても明るく木星が見えた年だったので、最高の選曲である。 演奏もエキサイティングで、華々しいエンディングがカウントダウンのタイミングと完璧に合っており、曲の終わりと同時に新年を迎えることができ、今年もカウントダウンは成功した。 番組では、宇宙ステーションに長期滞在中の野口宇宙飛行士の生中継出演もあり、宇宙船内で龍笛を演奏しつつ、曲のリクエストなどをしていた。 東急やるなあ、テレ東やるなあ、と思った次第である。 こんな体験ができるならテレビではなく生で聴きに行くべきだったと反省もした。 それから、ステージ後ろのスクリーンでは様々な美しい宇宙や地球の映像が曲に合わせて流れており、これも印象に残った。 主に使われていた映像は、人工衛星が見た地球の画像などを芸術的な映像作品として発信している「BELLAGAIA」(ベラガイア)の引用だった。 宇宙の神秘と地球のかけがえのなさを実感するという、これまでのジルベスターには無かったテーマの演出だったが、とても共感した。 なお、この「BELLAGAIA」という作品(作品群)は、米国人アーティスト、ケンジ・ウィリアムスがNASAの協力により制作しているもので、その成果の一部はYouTubeなどで公開されている。 BELLAGAIA 5min sample これを友人に紹介されて初めて見たとき、感動したと同時に、正直「やられた」と思った。 自分がやりたかったことが、まさにこれだったんじゃないか、と思ったからだ。 今まで私は、宇宙から見た地球の画像やデータ、すなわち地球観測データを使って、全国の教育現場で子供たちや先生方と宇宙や地球の今、そしてこれからのことを考えてきた。 一方で、このようにメッセージ性の高いテーマは芸術活動としても成立するのではないか、ということも考えてきた。 前者のいわゆる宇宙教育のほうは、教育を専門とするスタッフや先生方のお陰で、ここ数年でかなり仕事として軌道に乗ってきたが、後者のいわゆる宇宙芸術のほうはまだ活動できずにいて、これもいろいろな方々の協力がないと難しそうである。 私は芸術に関しては素人でその方面の知識もコネも不足しているし、現代の芸術表現には欠かせないメディアクリエートなどの技術もないので、何とか協力者・理解者を増やして芸術活動の第一歩を踏み出したいというのが今年の目標だ。 *** 本年もよろしくお願いいたします。
2009年7月22日は日本で皆既日食が見られます。
皆既日食が見られるのは南西諸島などの一部の地域だけですが、全国的に部分日食も見られます。 2009年7月22日皆既日食の情報:国立天文台 天文イベントは宇宙開発とも密接に関係しています。 ここではJAXAがからむ日食関係のイベントやら、観測やらをまとめておきます。 衛星による皆既日食生中継 硫黄島から皆既日食の映像が、小笠原諸島父島から木もれ日の映像が、高速インターネット衛星「きずな」により生中継されます。 東京駅前の丸の内オアゾにあるJAXAiと、茨城県つくば市の筑波宇宙センターで見ることが出来ます。 また、各地の科学館にもストリーミング中継されます。 日食中継イベント!JAXAでは、「きずな」を使って日食の様子を生中継します。今世紀最大の日食を思う存分楽しもう! 国立天文台・7.22皆既日食中継 7/22追記: 雨のために衛星通信(雨に弱い)が心配でしたが、中継は成功しました。実際に中継された映像が静止画で公開されました。 2009年7月22日皆既日食の速報画像:国立天文台 木もれ日写真の募集 日食のときに木もれ日を撮影すると、光の斑点が、丸ではなく欠けた太陽の形になります。ピンホールカメラ(って知ってますかね…)の原理と同じで、木の葉の間の狭い隙間を通ってきた光によって地面に太陽の形が投影されます。 JAXA宇宙教育センターでは、日食の時の木もれ日写真の投稿を受け付けています。 日食の観察 みんなで木もれ日を撮ろう 衛星による日食の観測 日本では皆既日食になりますが、JAXAの太陽観測衛星「ひので」の軌道上では部分日食を観測できる予定です。 X線望遠鏡(XRT)により、地上では見ることの不可能な、X線で見た日食の様子を見ることができます。 7月22日皆既日食~「ひので」衛星から見た日食を即時公開~ 7/22追記: 上記ページで、予定どおり、部分日食のX線画像が公開されました。 衛星からの地上の日食地帯の観測 日食のとき宇宙から地球を見ると、月の影が地球上に見えます。 言い換えると、日食が見えている地域を宇宙から見ると、そこだけ太陽が当たっていないので、ぽっかりと黒い穴があいたようにそこだけ暗くなります。 この様子を、地球観測衛星などで観測することができます。 ※軌道を考えると日本がからむ3つくらいの衛星で観測ができるはずですが、事前に情報が公開されたのは「ひまわり」だけのようです。 気象庁 | H21/7/22日食時の「ひまわり」画像 7/22追記: 上記ページで、予定どおり、日食時の月の影の画像が公開されました。 追記(2): NASA&JAXA共同の衛星TerraのMODISによる画像も公開されました。 EORC | 地球が見える-日食の影 追記(3): 「いぶき」が捕らえた食時の月の影の画像も公開されました。これでやっと、予告してた3つの衛星のデータが無事そろいました。 「いぶき」が宇宙から日食を撮影! ところで私自身は何をするかというと、当日の天気が曇りということで、曇りでもできるしょーもない観測を思いついたのでやってみます。 うまくいくかは分かりません。 たぶん最後の追記: 衛星による月の影の観測についてまとめ記事を書かせていただきました。
地球に落ちる月の影―2009年7月22日皆既日食における衛星観測 それから、上のほうで書いた私のオリジナルの「曇りでもできるしょーもない観測」についてですが、職場の建物の屋上にある太陽電池の出力をモニタし、食の最大のときに電力が下がるのをグラフにしようと思っていました。 ただ結果は、雲が厚すぎ、日食前から電力が、モニタで表示できる最小電力値(0.1kW)となっており、電力の低下を調べることが出来ず観測は失敗しました。
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